かいぼうの手引き 本編

初めて小説らしいことを文章に書きつける。

 

「かいぼうの手引き」 著 ちゃや

 

プロローグ

私は医学部に通う5年生。毎年春学期の中盤から2年生の解剖実習が始まるため、解剖学の成績の良かった私は、その手伝いに駆り出される。

解剖実習は御献体をレジュメに従い解剖していくものであるが、御献体はホルマリン漬けにされているため、梅雨と被る実習期間中はその独特な匂いが医学部キャンパス内を包み込む。毎年のことであるが、私は未だに慣れることができない。

 

4年前

私はこの春にハレて女子大生デビュー!しかも新歓で仲良くなった先輩と最近いい感じなんだよね~。その先輩は同じ医学部の一個上の2年生、いつも少し顔色悪いけどそんな感じもとても良い。

2年生なので忙しく、最近解剖実習が始まったらしい。でも解剖は終わる時間がバラバラのため、バイトを入れず、よくご飯とかに連れてってくれたりする。

シャワーを浴びた後でも、ほんのり薬品臭い。だけれど、その日の解剖について楽しそうに話す姿はとても可愛いのだ。

この前遊んだ時に、期末テストが終わったら一緒に少し遠くにお出かけに行こう、という話になり、8/1に水族館に連れて行ってもらえることになった。ちょうどその日は私の誕生日、覚えててくれたのかな?

予定の日、私は先輩からの連絡を待った。その前日までテストだと聞いていたので、疲れて寝坊しているのだろう。緊張のためあまり眠れなく、気づいたら私は寝てしまった。

先輩からの電話が来て目を覚ましたが、向こうの人は泣いている女性の声だった。

それからはあまりよく覚えていない。初めて礼服に袖を通したくらいだ。

銀杏たちが奇麗に色付いた時期、大学でどこか懐かしい顔と匂いのする先生を見かけた。それから先生の研究室にたびたびお邪魔しているうちに、先生は彼の子供のころの話をしてくれた。今彼がどこで眠っているかなども。

 

エピローグ

今年も2年生たちからよく呼ばれる。確かに解剖は慣れないと難しい。解剖の手伝いは忙しいが、将来解剖学の研究に進もうと思っている私には良い勉強だ。

1年生の内から解剖学研究室に入り浸ってたせいでもあるが、私にはどうしても、自分の手で解剖したい御献体がある。そのためにも解剖のスキルを身につけなくてはならない。

全ては保管庫に眠る20歳男性の御献体のために。